森一生『大魔神逆襲』(1966)

(87分・35mm・カラー)巨大な石像の武神が目を覚まし、地獄谷で武器作りの強制労働に苦しむ村人たちを救う。シリーズ最後となる本作では、前2作にもまして子どもたちの活躍が前景に押し出されることとなった。「子どもが出ると、子どもに溺れて駄目なんですよ、ぼくは。あんまり惚れすぎて」(森一生)。
'66(大映京都)(監)森一生(脚)吉田哲郎(撮)今井ひろし森田富士郎(美)西岡善信、加藤茂(音)伊福部昭(出)二宮秀樹、飯塚真英、堀井晋次、長友宗之、安部徹、仲村隆、北林谷栄(FC)

なんてことない話だが、味わい深くて堪能。大映の特撮は芸術的。ロケ地は立山連峰。地獄谷では硫黄が噴出。当時はいまよりも秘境だったらしい。
音楽は伊福部昭。祖先は出雲の伊福部族で、タタラ製法で金属器を製作していた。出雲族天孫族(大和族)にとっての他者。これは伊福部にとって重要な意味をもちうる。成瀬巳喜男『コタンの口笛』も伊福部昭が担当。北海道釧路氏出身。
シリーズ第3作(すべて1966年)のうち、この作品だけで剣が抜かれる。内なる他者としての大魔神日米安保体制下、日本のナショナリティにとっての他者とはいったい誰か?(=本当の他者は誰か?)という問いが浮上する。大和族=逆コースをたどる日本政府における、自他同一性(ナショナリティ)の揺らぎ。
ラヴェル/ピアノ協奏曲 ト長調 第3楽章」。とくに2分57秒すぎ。これは『ゴジラ』のテーマ。