森一生『荒木又右ヱ門 決闘鍵屋の辻』(1952)

(82分・35mm・白黒)チャンバラ描写の革新に力を注いだ占領期の黒澤は、本作において三十六人斬りで有名な荒木又右衛門の英雄的なイメージを破壊し、史実に基づいた生々しい人間ドラマに換骨奪胎した。『羅生門』の撮影時に黒澤と知り合った大映森一生が、東宝に招かれて撮った作品。
'52(東宝)(監)森一生(脚)黒澤明(撮)山崎一雄(美)松山崇(音)西梧郎(出)三船敏郎、濱田百合子、志村喬片山明彦、千秋實、加東大介徳大寺伸 (FC)

冒頭で戦前の典型的なチャンバラ映画(伊藤大輔的な?)をやってみせてから、ナレーションがおもむろに「これは講談師が面白おかしく脚色したものにすぎない。本当は荒木又右ヱ門は二人しか殺さなかったのだ。これから史実にもとづいた物語を見てみよう」と、ユーモアたっぷりに物語がはじまる。現実の果たし合いのショボさを強調する「反戦チャンバラ映画」になっているのは、独特の趣向で面白い。最後で腰をぬかしながら不様に斬り合うシーンはなかなか力が入っていた。