気分がむしゃくしゃするので、八重洲古書店で散財。村岡典嗣『増補 本居宣長1・2』(東洋文庫)、ヤマザキマリテルマエ・ロマエ 2』、上杉隆上杉隆の40字で答えなさい』(大和書房)。ブルーノートのレコードが安くでたくさん出ていたので、3枚揃いで買おうかと思ったんだけど、これは見送り。『本居宣長』は前から欲しかった本で1巻はざっと目を通したんだけど、面白そうなのは2巻からっぽい。たぶん『玉勝間』を読んでからの方が良いと思うんだが、近世の儒学・古学史を概観した付録もついていて、なかなか興味深そう。
柳広司という人の『饗宴』(創元推理文庫)を200ページほど、『ザビエルの首』(講談社文庫)を150ページほど、昨日読んでみたんだが、何ともいまいちだった。『饗宴』はペロポネソス戦争で荒廃したアテナイを舞台に、ソクラテスとその仲間が謎のピュタゴラス教団に相対するという話で、プラトン『饗宴』のパロディーはそれなりに面白いんだが、本質的な部分で魅力を感じないのはなぜだろうか。既知の情報のなかに説得的な未知の関連を見出す面白さ、というのが歴史物の魅力だと思うんだが、ミステリー小説という結構のせいか謎の設定がせせこましくて、歴史的事実がたんに当てはめられているだけの印象が残るかも。『ザビエル〜』も、これだったら若桑みどりの『クアトロ・ラガッツィ』を読んだ方が良さそう。
それにひきかえ、浅田次郎『中原の虹』(講談社文庫)の素晴らしさである。張作霖が主人公のはずが、とつぜんヌルハチ(とホンタイジと思われる人物)が出てきて、それだけで胸が高鳴ってしまった。自らは覇権を望むのではないヌルハチ女真族の統一戦に挑む際、遠い始祖である金のワンヤンアグダを想起するのだが、金の女真族契丹の遼にどれだけ搾取され、大義のためだけに立ち上がらねばならなかったかを考えれば、このヌルハチの想起には十分な意味合いがあるように思われる。満洲(マンジュ)が文殊菩薩に由来する名称というのは間違いとの説もあるが、貧しい者、虐げられた者の義憤をこの土地に見るロマンが、張作霖・張学良親子のキャラクターに反映されていて、やっぱりとてもすばらしい。いまは1巻の途中、物語が北京の紫禁城に戻ってきたところ。宮崎市定中国文明の歴史 11 中国のめざめ』(中公文庫)なんかをちょびちょび拾い読みしてると、なかなか進まないんだけど。
NHKスペシャル「貧者の兵器とロボット兵器〜自爆将軍ハッカーニの戦争〜 」。

9.11同時多発テロから9年、米軍とタリバンの泥沼の戦闘が続くアフガニスタン。ここに歴史上初めての全く新しい戦争の姿が出現している。ハイテク無人機など“ロボット兵器”を駆使する大国正規軍と、カラシニコフ銃や手製爆弾など旧式の“貧者の兵器”に頼る武装集団が、互いの姿の見えない戦場で対峙する究極の“非対称戦争”だ。
知られざるその実像をとらえた膨大な映像記録をNHKは入手した。そこにたびたび登場するのがタリバン最強硬派の「ハッカーニネットワーク」だ。自爆軍団として米軍に恐れられ、無人機攻撃の最大の標的にもなっている。
だが、ソビエトがアフガンに侵攻した80年代、首領のハッカーニは反ソ勢力として最も頼りになる米国の友人だった。武器の供給から爆弾の製法まで、米国の支援で力を蓄え、皮肉にもそれが今、米軍を苦しめている。
今、米国はハッカーニらのゲリラ戦から自国兵士を守るため、ロボット兵器を次々と開発し、米本土から遠隔操作で攻撃を行う。だが誤爆も相次ぎ、犠牲者周辺からタリバン予備軍を生み出す憎しみの連鎖も呼んでいる。“貧者の兵器”対“ロボット兵器”。その実態を描き、21世紀の新たな戦争の姿とその脅威に迫る。

米兵の生命を守るため、無人飛行機で本土から遠隔操作で爆撃をする米軍。誤爆による民間人の殺傷で、タリバン自爆テロは脅迫・洗脳によってますます過激化。戦争で貧困に陥った住民はアメリカのスパイとなり、その行為がばれた者は処刑され、見せしめのためビデオ録画のうえ放映される。無人ロボットによる攻撃がおぞましく、人々の憎悪をいっそう駆り立てるというのは、うまく説明できるわけではないが、分かる気がする。