森一生『ある殺し屋』(1967)

(82分・35mm・カラー)藤原審彌の小説「前夜」を映画化。日常は小料理屋の板前を装い、依頼された仕事は必ず成功させる無口な殺し屋・塩沢を市川雷蔵が演じた和製フィルム・ノワールの傑作。塩沢の腕に惚れてつきまとうやくざの前田(成田)、無銭飲食の女・圭子(野川)が色と欲で結びつき、報酬の横取りをたくらむ。
'67(大映京都)(監)森一生(原)藤原審爾(脚)増村保造石松愛弘(撮)宮川一夫(美)太田誠一(音)鏑木創(出)市川雷蔵野川由美子成田三樹夫渚まゆみ、千波丈太郎、松下達夫、小林幸子小池朝雄伊達三郎、浜田雄史、橋本力、伴勇太郎、岡島艶子(FC)

日活風コスモポリタンかと思いきや、宮川一夫キャメラは無国籍な海辺の廃墟を映しても、溝口映画の情感をたっぷり引きずっている。小料理屋の主人で、実は殺し屋の市川雷蔵は、中井貴一にそっくり。裏切った仲間に「若い若い、一寸先も見えねえ奴らだな」とタンカを切る。かっこいい。