篠田正浩『あかね雲』(1967)

(107分・35mm・パートカラー)独立プロダクション、表現社の製作による第1回作品。昭和12年、越前輪島。貧しい家計を助けるために働きに出た二木まつのは、缶詰会社の外交員小杉の勧めで仲居として山代温泉で働くようになる。小杉を慕うまつのだったが、彼には隠された秘密があった。水上勉の同名小説を鈴木尚之が脚色。岩下志麻はこの年数々の主演女優賞を受賞した。
’67(表現社)(監)篠田正浩(原)水上勉(脚)鈴木尚之(撮)小杉正雄(美)戸田重昌(音)武満徹(出)岩下志麻山崎努佐藤慶小川真由美、日高澄子、花柳喜章、宝生あやこ、信欽三、赤木蘭子、河原崎長一郎、野々村潔 (FC)

悪い作品だと思わないが、何も知らない素直なおぼこ娘(岩下志麻!!)が、だまされて身売り同然の境遇に陥ったり、悪いオッサンに処女を奪われたりする、などという設定は、自分のなかのインテリ性が、安易な同情を禁じてしまう部分がある。ある意味で「女の強さ」がテーマではあるのだが、「処女」の商品価値がこれほど高いのは下部構造としての男性優位社会の反映であろう、とか、いいように搾取されている娘にはもっと教育が必要であろう、とか、「素直なおぼこ娘」という非主体的=男性依存的ヒロイン像がそもそも受容しがたい。時代劇のつもりで見ればいいのか?
北陸が舞台っていうのは良いね。話しぶりなんかも含めて、人間がどこか京都っぽい。岩下志麻山崎努佐藤慶もよいのだが、映像の緊密な構成が格調高いぶん、若干息詰まるところがなきにしもあらす。ところどころでよく出来たCMのようなキャメラワークが(ちょっと作為を感じる部分も)。この監督自身の特徴かもしれない。