岡崎京子『カトゥーンズ』(角川書店)。ほぼ読み終えたと思っていたので、未読の本を見つけて、ちょっとうれしかった。すれちがう人々の日常の断片。「私達はそれぞれの人生の主人公であり、他人にとってはワキ役であり、そしてそれは同時に起こり得ることです。私達はすれちがうだけかもしれませんが実は出逢っちゃってて(忘れてるかもしんないけど)物語は始まっちゃってるのです」(155)。自分の日常は他人にとっての非日常でありうるし、他人の日常に浸されることのなかに、自分の非日常が成立するかもしれない。「星はまだキラキラと宝石のようにかがやき あたしは何となく 読んだことないけど中学の時シケンで出た 『夜明け前』の作者はたしか島崎藤村だったなァとか 思いながら夜の街を歩いてた」(73)。自分の日常(定点)は大いなる非日常(定点の外部)の一部なのかもしれないという捉え返しの感覚。まあ読んでると天才だなって思う。

カトゥーンズ (単行本コミックス)

カトゥーンズ (単行本コミックス)