広瀬正『マイナス・ゼロ』(集英社文庫)

時間SFの傑作というウワサだったが、これが本当に大傑作だった。昭和20年の世田谷の少年が30歳になった昭和38年に、あこがれのお姉さんとタイムトラベルで再会するが、間違って昭和7年に戻ってしまう。世田谷の梅ヶ丘とか、昭和7年の銀座4丁目界隈とか、時代考証や風俗描写も緻密で、ストーリーの面白さは抜群。ふむふむ、あれがナニしてこうなるのか、と納得しながら読み終えた。とび職のオヤジさん(カシラ)とかのキャラも立ってるし、青春モノの爽やかさもある。ロバート・ハインライン夏の扉』(ハヤカワ文庫、福島正実訳)も面白かったが、それの上を行くかもしれない。いや、『夏の扉』も相当な傑作ではあるが(キュートな猫のピート、注射針で主人公ダニィを昏睡させる恐ろしい妻ベル、機械オタクのダニィを一途に愛する、ちょっと偏屈なところが可愛らしいリッキィ。素晴らしい)。いずれにしても、超おすすめ。

広瀬正・小説全集・1 マイナス・ゼロ (集英社文庫)

広瀬正・小説全集・1 マイナス・ゼロ (集英社文庫)

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

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