木村惠吾『惜春』(1952)

(97分・35mm・白黒)「狸御殿」シリーズの木村惠吾が新東宝で監督・脚本を担当した唯一の作品。安月給のサラリーマンの藤崎実(上原)は、流行歌手の妻(笠置)に頭が上がらない。やがて藤崎は、妻の公演旅行中に家政婦として来ることになった蟻安たか子(山根)に惹かれていく・・・。仕事関係の人々が始終出入りする家の中で笠置シヅ子に翻弄される上原謙の亭主ぶりが面白い。
‘52(新東宝)(監)(脚)木村惠吾(撮)小原讓治(美)下河原友雄(音)飯田三郎(出)上原謙、山根壽子、笠置シヅ子、齊藤達雄、清水将夫田中春男伊藤雄之助東野英治郎 (FC)

楽器会社でピアノを売っている上原謙は、「ブギウギ」の流行歌手・笠木シヅ子のヒモ状態。笠木が一ヶ月、公演にでている間、山根壽子が家政婦としてやって来る。上原は、そこではじめて家庭の良さを味わい、山根も上原に好意を抱く。連休を見つけ、日帰りの予定で熱海に山根を誘うのだが、東京に帰れなくなった二人は温泉宿で…。
春の近い幸福な雰囲気のなかで、不倫の予感という俗っぽさが素晴らしい。不倫ネタだが、上原と山根の二人がアッケラカンと爽やかなのもよい。熱海の温泉宿の一夜のシーンなど、最高。