マニュエル・ポワリエ『マリオン』(1997)

MARION(106分・35mm・カラー) 引越してきたばかりの村で、両親からも相手にされず、孤独を感じる少女マリオン。近所に別荘を持つ親切な年配の夫婦から、ある日養子の提案を受ける。マニュエル・ポワリエ監督は、本作と同年製作の『ニノの空』でカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞し、国際的にも広く認められている。
’97(監)(脚)マニュエル・ポワリエ(脚)セリーヌ・ポワリエ、ジャン=フランソワ・ゴワイエ(撮)ナラ・ケオ・コザル(美)ロラン・マビユ、アレクサンドラ・ブカン、ローラン・ペリエ、ジャッキー、ヨヨ(音)アンヌ=マリー・フィジャル(出)マリー=フランス・ピジェ、ジャン・リュック・ビドー、ピエーリ・ベリオ、エリザベート・コムラン、コラリー・トゥタール (GH)

見てよかった。マリオンは庭師の家の次女で、小学校六年生の天真爛漫でかわいらしい女の子。転校生を受け入れることになった小学校では、「新しい友達を受け入れるためにはどうすれば良いですか?」と先生が質問を投げかけ、連帯(ソリダリテ)、公民性(シヴィック)などの共和主義的語彙が飛び交っている。この冒頭シーンが意味深いのは、ソリダリテだのフラテルニテだのといった理念の内部に潜む隠しようもなく明白な断裂を、この作品が繊細に描くからである。
近所の別荘にバカンスにきているブルジョワ階級の夫婦と、労働者階級のマリオンの家庭は、ふとしたきっかけから親しく交わるようになる。そのなかでマリオンの養子話が持ち上がるのだが、「パリの中学校に進学する」という選択肢を前に、マリオンの両親は決断をせまられる。ピアノ、ラブラドールレトリバー、高級ライターなど、階層的な資源の明らかな違いを見せつけられて、そこには引力と斥力が同時に働くのであるが、ブルジョワ/労働者という断絶だけではなく、労働者内部での移民の問題など、社会経済的な要素への目配りが行きとどいていて、とても良かった。マリオンの家庭は子どもが4人もいるのだが、子どもたちが生き生きとしていて非常に愛らしい。子ども/大人というのも、この作品のポイントだ。
http://www.lumiere.org/films/marion.html