絶版の本をまるまる一冊コピー。400ページほどあって、意外と重労働。
週刊文春』で池上彰が「1999年以降、日本は金融緩和を進めたが、海外投資家が円キャリートレードによって投機しただけ(=金融緩和の効果はなかった)」などと書いており、ブチ切れる。「円キャリで円が海外流出」というのは、ありがちなトンデモ経済理論。普通に考えればわかることだが、円は海外では使えないので、国外に流出したりしない。円キャリで運用されているのは、結局、外貨だから。あたりまえだけど。
ちなみに円キャリで外貨を交換すると、外貨需要が高まるので、円安・(たとえば)ドル高傾向になる。もちろん、輸出拡大で金融緩和効果が生じることになる。また輸出が増えると、こんどは国内企業は稼いだドルを円に換えないといけなくなるが(給料払えないから)、これが円キャリの外貨需要に吸収されると、最終的には円安を止める要因になると考えることもできる(ワンサイクル循環するまで考えてみるとこうなる。経済現象は基本的にぐるっと循環するので)。どっちにしろ、このサイクルの過程において「輸出でモノが売れている」のだから、「金融緩和効果がない」などということにはどう考えたってならない。松尾匡『不況は人災です!』(筑摩)のP.160〜164を見よ。
池上彰にキレたと書いたが、ほんとはその数時間前、『週刊読書人』で萱野の自著推薦文を読んでいて、それにキレたのである。池上彰はべつに悪い人だと思わないが(むしろふつうに良い人だろう)、萱野が一知半解の経済理解で「世界を語っちゃっている」のは、頭が悪くて端的に目ざわりだ。せっかくだから、〈たとえばマルクスを読んだら本当にそんな理解になってしまうのか?〉について、検討してみようかな。