黒澤明『野良犬』(1949)

(122分・35mm・白黒)うだるような猛暑に包まれた敗戦直後の東京を舞台に、拳銃を奪われた新米刑事がベテラン刑事とともに犯人を追いつめる姿をスリリングに描く。推理作家G・シムノンを愛読していた黒澤が新進の菊島隆三と意気投合し、警視庁の膨大な資料から脚本を練り上げた。有名な闇市の撮影は監督補佐を務めた本多猪四郎のB班によるもの。
'49(新東宝映画芸術協会)(監)(脚)黒澤明(脚)菊島隆三(撮)中井朝一(美)松山崇(音)早坂文雄(出)三船敏郎志村喬、淡路惠子、三好榮子、千石規子本間文子、河村黎吉、飯田蝶子東野英治郎、永田靖、松本克平、木村功 (FC)

警官もスリもダンサーも、玉のような汗を噴き出している。汗のかけない野良犬は舌を出してハアハアいっている。闇市と野球場のロケ。音楽や風俗に南方色が濃いが、戦争の記憶が徐々に薄れる頃にモスラが東京タワーに向かって飛んできたんだなぁと思った。黒澤作品は「求道or説教映画」という、映画における独自ジャンルなのではないか、という結論に近づきつつある。