最終日にして「ナポリ・宮廷と美 カポディモンテ美術館展」(@国立西洋美術館)。なかなか面白かった。ナポリを見てから、死にたいものですなぁ。
ダ・ヴィンチやラファエロの影響を受けたルネサンス様式(コレッジョ「聖アントニウス」、ベルナルディーノ・ルイーニ「聖母子」とか。それぞれダ・ヴィンチラファエロ風)から、マニエリスムを経てバロックまで、イタリア美術の重要作品がずらずら並んでいる。ファルネーゼ家とブルボン家ナポリバロックを収集)のコレクション。天才画家と言われたパルミジャニーノの「アンテア」が目玉商品になっており、これは初期マニエリスムの特徴が見られる作品(右肩に動きがあるそうです)。ルネサンスからの逸脱を示したマニエリスムは、しかし対抗宗教改革の絵画規範とは衝突する面があり(こんなものが決められていた!)、ティツィアーノ・ヴェチェッリオ「マグダラのマリア」は対抗宗教改革の影響を受け、内省的なマグダラのマリアが夕暮れ時に改悛するの図を描く。
で、途中からバロック作品が並ぶんだけど、バロックって何なんだろうね。アゴティーノ・カラッチ「毛深いアッリーゴ、狂ったピエトロと小さなアモン」は、動物と半獣人が主題で、ヨーロッパ人の人間観のどうしようもなさを痛感させられる作品(面白いけど…)。その兄弟のアンニーバレ・カラッチ「リナルドとアルミーダ」は第1回十字軍を主題としており、この人物はカラヴァッジョと並んで、16世紀末、絵画史に重要な足跡を残した人である(らしい。カラヴァッジョとは仲が良かったそう)。マニエリスムを超えてカラッチがラファエロ的古典様式を復活させたのに対し、カラヴァッジョの自然主義は別の仕方でバロックの方向性を定めることになる(ゴンブリッチ説)。カラヴァッジョ風作品としては、彼の弟子の娘アルテミジア・ジェンティレスキ「ユディトとホロフェルネス」が迫力十分。アッシリアの将軍ホロフェルネスの首をユディトがちょん切る(怖い)。
ゲーテが激賞し、三島由紀夫も萌えたというグイド・レーニ。彼の「アタランテとヒッポメネス」は結婚希望者と競争する俊足アタランテに対し、ヴィーナスの智慧を受けたヒッポメネスが黄金のリンゴを投げつけるというもの。「私と結婚したかったらこの火を超えなさい!」的なノリ??グイド・レーニはもともと音楽家になりたかったから、古典主義的要素のなかに音楽的均整が認められると、休憩の椅子においてあった解説目録に書いてあったが、本当か?
当時のイタリアでは「聖アガタ」の主題が人気で、つごう二枚の絵が展示されていた。3世紀のローマ総督(?)に娼婦にさせられ、拒絶していたら乳房を切り取られたという怖い話。『怖い絵』ですなぁ。フランチェスコ・グアリーノのものは名作。あと、展示の説明パネルだとよく分からなかったんだけど、マニエリスムと対抗宗教改革バロックの関係性がものすごく不明。バロックの法悦と対抗宗教改革の聖人犠牲とか、なんか関係あるの?
http://www.tbs.co.jp/capo2010/index-j.html