フリッツ・ラング『怪人マブゼ博士(Das Testament des Dr.Mabuse)』(1932)

主演:ルドルフ・クライン=ロッゲ、オットー・ヴェルニック、グスタフ・ディーズル
偽札工場の黒幕を追うローマン警部の前に、精神病院に入院しているマブゼ博士の存在が浮かび上がる。病院に博士を訪れた警部は、彼がすでに死んでいたことを知るのだが、その後もマブゼと名乗る男によって博士が生前書き残したメモ通りに犯罪が実行され…。公開当時、ナチ政権によって上映禁止となった幻の作品。その後、ラング監督はアメリカへ亡命することになる (CV)

ぐわんぐわんと轟音が鳴り響く部屋を、震えながら逃げまどう男。ずっとぐわんぐわん言ってるので、映画が古くて音声がおかしくなってるのかと思ったが、実は「マブゼを名乗る男」の極秘司令に基づき、偽札の輪転機が回っていたのであった。狂って電話をかけ続けるマネをする男、精神病院で犯罪計画を書き連ねるマブゼの姿、「マブゼを名乗る男」が化学工場を爆破し車で逃亡するシーンなど、怪奇サスペンスの雰囲気はすばらしい。ローマン警部が軽妙なので、全体としてはアメリカ映画っぽい感じになってるんだけど。
ゲッベルスが何の危険を読み取ったのか定かではないが、ナチスは上映禁止にしたらしい。マブゼの犯罪計画は悪の魅力に満ちており、むしろナチスにとっては良かったのではないかという気もする。フリッツ・ラングは何を考えていたのか?