前田陽一『喜劇 男の子守唄』(1972)
主演:フランキー堺、倍賞美津子、生田悦子、ミヤコ蝶々、真山譲二、森川信、小松陽太郎、ミッキー安川、田端義夫、鳳啓助、京唄子、財津一郎、大泉滉
戦争孤児の自分を育ててくれたパンパンのお竜が死に、遺児の太郎を育てるため、昼はちんどん屋、夜はホストクラブに勤める清造。そこにお竜のかつての仕事仲間だった蝶子が現れ、太郎を養子に欲しいと言う。太郎を渡したくない清造だったが、焼け跡で育った仲間が経営するスーパーが蝶子の手に渡るのを止めようと、泣く泣く太郎を引き渡し…。焼け跡世代の心情を切なく綴った喜劇。(CV)
高度成長で高層ビルが立ち並ぶなか、闇市の跡に立ったスーパーマーケットで相変わらずさえないチンドン屋を続けている清造(フランキー堺)。「あんなコンクリートの塊は嫌いだ、いつかは空襲で全部消えてちまうんだ」と憎まれ口をたたく清造の原点は、戦後の焼け野原にある。不器用なこだわりが、映画に強度を与えており、なんとも素晴らしい。
清造、婦人警官(生田悦子)、倍賞美津子の誤解含みの三角関係に、養子が欲しいというミヤコ蝶々。倍賞美津子はやっぱりすばらしい。フランキー堺はこの時期、あまり上手くいってなかったんじゃないかな、という気がするのだが、そのへんも含めてとてもいい。ラストのオチ、脚本もうまくできている。
菊池章子「星の流れに」
http://www.youtube.com/watch?v=RLaIzuk-7ZY&feature=related