立川談春「25周年スペシャル独演会 THE FINAL」のため、新宿へ。東京厚生年金会館は三月末をもって閉館となり、パンフレットには談春がこう書いている。「「厚生年金の大ホールで最初に独演会をやったのは確か談志(オレ)のはずだがな」/家元の呟きには鳥肌がたちました/ラストは弟子が務めます/目一杯、肩肘張って/笑っちゃうほど力みまくって/演らしてもらいます」
大ホールなのでスクリーンが設置されており、同じ試みをやったときの談志独演会のビデオが冒頭で流された。いきなり呼びつけられ、洋装のまま高座に上がる談春、観客席からそれを眺める談志…。前半は「粗忽の死者」「愛宕山」。「愛宕山」の前にもビデオが放映され、京都の愛宕山、「かわらけ投げ」実践の様子などとても勉強になった。談志の前で初めてやった落語が志ん朝コピーの「大山詣り」だったこと、厚生年金会館での志ん朝との思い出など、志ん朝へのリスペクトを語ったエピソードもとても面白かった。
後半は大ネタの「たちきり」。芸者の小糸と深い仲になった若旦那だが、番頭は若旦那を百日間、蔵の中に閉じ込める。それとは知らない小糸は毎日手紙を書き続け、番頭は百日手紙が届いたなら、二人を添い遂げさせようと考える。だがけっきょく思惑はすれ違い、小糸の身に悲劇が訪れる。悲劇をもたらしたものは、ある意味、小糸の「了簡の狭さ」であるのだが、それを誰も責めることができないところが切なく、やるせない。仏壇の前でひとりでに鳴る三味線の音に、会場もすすり泣いたのであった。