上念司『デフレと円高の何が「悪」か』(光文社新書)。超おすすめ。「モノとお金のバランス」を調整するのが経済政策であり、お金が不足するデフレ、その副産物としての円高が、どのように甚大な悪影響をもたらすか(現にもたらしているか)が、きわめて分かりやすく説明されている。
この本を読めば、経済政策の当事者(日銀、財務省)、経済問題を論説するマスコミ、エコノミストらが、いかにデタラメなことを言って平然としているかが、カンペキに理解できる。著者は典型的な経済学的俗説を明快に批判したうえで、「まったく恐ろしい話です」と結ぶのであるが、ほんとうにまったく恐ろしい話だと思わざるをえない。東大を出ていようが、キャリア官僚であろうが、(脳味噌の出来が)でたらめなやつはでたらめだ(ポジショントークに終始する悪人である可能性も大)。「デフレ/円高」にも良いところがある、インフレは危険、財政再建のためには消費税増税が必要…等々の「トンデモ経済学説」が、なんの理論的検証も経ずに垂れ流されているのが現状であって、新聞を読んでいるとバカになってしまうことが、これで証明されたのではないか。
昭和恐慌における金本位制の歴史的意味(井上準之助高橋是清の評価)、国の借金の仕組みなんかもスッキリ分かって、とってもお得な一冊。

デフレと円高の何が「悪」か (光文社新書)

デフレと円高の何が「悪」か (光文社新書)