小津安二郎『彼岸花』(1958)

(118分・35mm・カラー)何の相談もなく結婚相手を決めた娘(有馬)に動揺する父親(佐分利)の姿が描かれる。娘の結婚を後押しする脇役陣も絶妙の演技を見せ、絹代は、悩める家族を静かに見守りながらも、どことなくユーモアを漂わせた母親役を演じている。
’58(松竹大船)平山清子(監)(脚)小津安二郎(原)里見恕s(脚)野田高梧(撮)厚田雄春(美)浜田辰雄(音)斉藤高順(出)佐分利信有馬稲子久我美子佐田啓二高橋貞二山本富士子桑野みゆき笠智衆浪花千栄子渡辺文雄中村伸郎、北竜二、高橋とよ、櫻むつ子 (FC)

会社の重役を務める佐分利信が父親で、母親が田中絹代(着物の感じがとてもよい)、子供は長女の有馬稲子に次女の二人、というプチブル家庭に、有馬の結婚話がもちあがる。家族ぐるみの付き合いをしている京都のオバサン(浪花千栄子)と娘(山本富士子)、佐分利の学友である笠智衆とその娘(久我美子)が、ストーリーに絶妙にからんでくる。結婚にうろたえ、矛盾まみれになる佐分利信を、強引かつスピーディーに納得させるユーモラスな展開がすばらしい。浪花千栄子山本富士子の京都弁が面白い(というか、個人的には懐かしく感じられる)のと、夫婦げんかのとき、夫の脱ぎ捨てた上着を畳に叩き落とす田中絹代の演技がキュート。何となく秋の風情があって、これは名作。