ファティ・アキン『そして、私たちは愛に帰る』(2007)

AUF DER ANDEREN SEITE ドイツ・トルコ合作映画 ドイツ語 2時間02分 出演: バーキ・ダヴラクハンナ・シグラ/ヌルセル・キョセ/トゥンジェル・クルティズ http://www.bitters.co.jp/ainikaeru/
始まりは、ネジェットの父が同棲中のトルコ人娼婦を殺害してしまった事だった……ドイツとトルコの国境を越え、社会問題を背景に、運命に導かれるまま、つながって行く3組の親子の愛と希望の物語!!(GH)

(1)トルコ系移民第一世代の父親、その息子でブレーメンの大学教授ネジェット、(2)ネジェットの父親と同棲をはじめたトルコ人娼婦、トルコの反政府活動家の娘、(3)娘のドイツ人の友人、その母、の三組の親子が出てくる。第二次大戦後、植民地をもたなかったドイツは、トルコ、ギリシア、イタリアなどから外国人労働力を得たが(東側諸国は当然スキップ)、ドイツとトルコの近さを大いに意識させられる。
トルコのEU加盟問題(トルコ国内の人権問題)、ドイツ人のムスリム評価、トルコ人原理主義化の動向(ジェットの父親が買春するようにむしろ第一世代はムスリムの規範から逸脱しがち)などのさまざまな要素が絡んで、なかなか見応えがある。ブレーメン(orハンブルク)、イスタンブールなどのロケもすばらしい(とくにイスタンブールの坂道、海が素晴らしい)。メッセージ性というよりは、世界の豊饒さを感じさせる点で大変優れた映画だが、犠牲祭のエピソードに見られるように、宗教的(一神教的?)偏狭を超えていくことがいちおうのメッセージとされており、しかし宗教的偏狭をこえた寛容としてのリベラリズムがじつはムスリム批判のヨーロッパ側における根拠を提供している面もあるようなので、話はそうとう複雑である。でも、人間が生で向き合うところから物事を捉えていくべきであることは、まちがいないと思われる。