両院議員総会は頓挫の模様だが、自民党の混乱がすさまじい。野中尚人『自民党政治の終わり』(ちくま新書)によると、前回参議院選挙での自民党の壊滅的退廃は「決定的選挙」だった可能性があるとのこと。単なる負けというのではなく、有権者の支持パターンの大幅な変更を伴うような。かつて小泉と「郵政選挙」を争った岡田は、(戦略的には)まったくのピンぼけで「政権交代」を連呼したが、小泉の経世会つぶし(自民党をぶっこわす)を経て、とうとう機は熟したのだという感じがする。
ちなみに前掲本のオリジナリティーは、江戸期以来の官僚制形成過程(吉宗の「足高の制」)をふまえた上で、戦後の行政官僚制の成熟とリベラル・リーダーシップの不在を特徴づける点にある。ボトムアップ型の自民党政治は江戸期以来の制度的遺産のもとで合理性を発揮しえたが、二大政党制への移行を通じて、トップダウン型の意志決定の仕組みを創出しなければならない。その道を準備したのは小沢であり、橋本行革である。政治家に優秀な人材が集まらないという構造的問題を何とかする必要はあるが、ゼロサム的な(非護送船団方式的な)政策課題が中心となるなか、ともあれ政権交代(を通じた予算の貼り替え)の必要性こそが総選挙の基本的な争点となる。民主党の政権構想の方向性の大筋は良いと思うが、本格的には参院の位置づけ等、憲法をいじることも含めた(運用の変更でもいいが)試行錯誤が必要だろう。