斎藤武市『骨まで愛して』(1966)

(91分・35mm・白黒)麻薬密輸組織から足を洗い函館の牧場へたどり着いた流れ者が、再び二つの組の抗争に巻き込まれる。作家、脚本家、作詞家として多くの業績を残した川内康範が自らの連載小説を脚色。同年発売の主題歌も大ヒットした。
’66(日活)(原)(脚)川内康範(監)斎藤武市(撮)萩原憲治(美)坂口武玄(音)小杉太一郎(出)渡哲也、松原智恵子浅丘ルリ子城卓矢宍戸錠金子信雄深江章喜、北龍二、杉江弘、近藤宏、郷?治

音楽、映像、巧みなユーモアなど、もう陶然としながら観るばかりだったが、それはやはり(当時の)社会における共同幻想の強力さゆえである。欧米的あるいはコスモポリタンな生活という近代化の目標が設定されたうえで、弱者同士の足の引っ張り合いが展開されるのが現実だとして(ゼロサムゲーム的な貧しさのなかでの資源獲得競争とその挫折)、そこに働く共感の原理は、いまや遠く失われた強力な磁場の渦中にある。コスモポリタンという抽象的理念は、現実からの離床欲求の強度に応じて、具体的なものとなりうるのであり、「函館」という地理的設定の巧みさはその点からも説明可能である。
『ギターを持った渡り鳥』の渡哲也版だが、この作品の渡はそこまで演技がひどくない。存在感抜群の宍戸錠に引っ張られている感もありつつ、宍戸は相変わらず素晴らしかった。松原智恵子のお嬢様ぶりも可愛いが、浅丘ルリ子の悲運な感じはこれぞ昭和というほかない。