黒澤明『羅生門』(1950)

[デジタル復元版](88分・35mm・白黒)ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞して日本映画の芸術性を世界に知らしめた黒澤明の代表作が、大映の権利を継承した角川映画アメリカのアカデミー・フィルム・アーカイブの共同作業によってデジタル復元された。フィルムセンターは元素材の提供と技術的なアドヴァイスを行うことで本復元プロジェクトに協力した(復元の詳細は『NFCニューズレター』82号を参照)。
’50(大映京都)(監)(脚)黒澤明(脚)橋本忍(原)芥川龍之介(撮)宮川一夫(美)松山崇(音)早坂文雄(出)三船敏郎森雅之京マチ子志村喬千秋実、上田吉二郎、加東大介本間文子 (FC)

狂気すれすれの密室劇、光がまばゆく反射する様子など、ポランスキー『水の中のナイフ』を想起。羅生門を流れ落ちる大量の雨がやはり素晴らしい。プロタゴラス相対主義を否定しうるものは良心の痛みだけ、というメッセージもすんなり腑に落ちるが、黒澤の本領である繊細な感覚美をデジタル復元で堪能。森雅之京マチ子の普段のアクの強さも見事に昇華されている。仰角で捉えられた夏の空にクラクラ。