豊田四郎『若い人』(1937)

(81分・35mm・白黒)原作:石坂洋次郎(1933-37年)後年の人気作家・石坂洋次郎出世作で、戦後も3回リメイクされた小説の同時代における最初の映画化。奔放で挑発的な女学生が主役の物語は自由が抑圧された時代に象徴的な意味を持つが、検閲からは危険視され、監督の豊田は彼女を環境の犠牲として描くことで企画を実現した。文芸映画監督・豊田四郎の生涯を決定づけた一作。
’37(東京発声)(監)豊田四郎(脚)八田尚之(撮)小倉金弥(美)河野鷹思(音)久保田公平(出)大日方傳、市川春代、夏川靜江、英百合子、山口勇、伊藤智子、林千歳、押本映二、鹿島俊策、松林清三郎、春日章、松田宏一、吉川英蘭

クリスチャンの女子校。若い教師に恋する不良少女が下宿までやってきて靴をプレゼントするシーンがよい。そのまま押し入れの中で寝入ったり、ハイヒールを履いて東京旅行に出かけたり(靖国神社)、旅行先で教師の結婚話を耳にして上履きに墨を垂らしたり。妊娠騒動にまで発展して「この学校の不名誉だわ」と噂し合うブスな少女たち。少女趣味が全開していて面白いが、風俗資料的関心を別にすると、豊田四郎というか文芸映画というジャンル自体というべきか、切れ味に欠ける印象は否めない。