八重洲の地下で本を売却。それなりの値段では買ってもらえるが、これはダメなのか?というのもあった。映画が終わってから日比谷のファーストキッチンに入ったら、何とも言えない妖気が。ヅカファンだらけだったみたいで、ファンクラブのヒエラルキーや特殊なしきたりを愚痴っている初心者っぽい人がいた。
西村賢太『暗渠の宿』(新潮文庫)。藤澤清造全集ってもうとっくに完成しているのかと思ったら、これからだというので驚いた。文中に突如として挿入される藤澤清造のエピソード・書誌情報などの蘊蓄であるが、確かに唐突ではあるけれど、その唐突さも含めて、作品の大事な要素になっているように感じられる。インフェリオリティ・コムプレックスやルサンチマンのせいで、思い込み・妄想・衝動性・暴力性など、認識が歪みまくっているサイテーの主人公であるが、これらの出来事を奇妙に整序してみせる客観性というのが不思議とあって、それは最終的に、没後弟子として藤澤清造を崇拝する著者の姿勢に発しているのではないかと思われる。奇妙な客観性、などと書いたが、それは破壊的生活をそのまま破壊的に書いたのでは作品にならないという意味でも重要だが、他方、そのようなかたちでしか客観性が保持されていないことの不可思議さ、或いは、そのようなかたちにおいて一応は客観性が保たれていることの不可思議さ、という意味でなかなか興味深い。要するに、「われわれの〈客観性〉とやらも十分に奇っ怪なあり方をしているではないか」という自省がどこかで促されるような気がする意味で、他人事ではないインパクトが知らず与えられているような気分になるのである。不思議な中毒性があるね。

暗渠の宿 (新潮文庫)

暗渠の宿 (新潮文庫)

小出裕章さんの解説(3月31日)。まだ爆発して最悪の事態にいたる可能性を回避できたといえる目途は立っていない、フランスの原発会社は何の役にも立たない、との指摘。結論的にいえば、現場のマンパワーを維持できるかどうかが別れ目なのではないか? 週刊誌などでは「チェルノブイリ中性子をコントロールする減速剤に黒鉛を使用していたが、福島はそれが水なので、メルトダウンして再臨界することはありえない」などと危険性を否定する見解も見られたが、どうなのだろう。とりあえず20分の電話出演だが、これは聴く価値があると思うよ。