ジャック・ドワイヨン『少年たち』(1998)

PETITS FRÈRES(92分・35mm・カラー)カンヌやヴェネチアなどの国際映画祭で数々の賞を受賞してきたジャック・ドワイヨンの作品。外国人居住者が多く、非行問題を抱えるパリ郊外を舞台に、繊細に揺れ動く少年少女の思いが描かれている。フレンチ・ヒップホップ界で人気のオキシモ・プッチーノが音楽を手がけたことでも話題を呼んだ。
’98(監)(脚)ジャック・ドワイヨン(撮)マニュエル・テラン(音)オキシモ・プッチーノ(出)ステファニー・トゥリー、イリエス・セフラウイ、ムスタファ・グマーヌ、ナシム・イゼム、ラシド・マンスーリ (FC)

13歳のユダヤ系の女の子が、性的虐待をする義理の父親から逃れ、キムという名前の犬を連れて家出をする。知り合いを頼るのだが、そこでアラブ系の非行少年たちに犬を盗まれてしまう。といっても、非行少年と女の子の間には恋心や友情のような感情もあって、女の子には「タイソン」という渾名が付けられる。
なぜタイソンかといえば、マイク・タイソンに顔が似ているからなのだが、タイソンもピストルで人を脅したり強盗をしたり、相当ワルい非行少女なのである。「犬を盗んだ人間は私が殺す!」などと暴言を吐いたりしている。トボケた感じの犬もいいし、非行少年&少女のエスノグラフィックな描写もすばらしいのだが、〈渾名がタイソンの女の子が登場〉する時点で、この映画の完成度は約束されていたようなものである。すばらしい。