黒澤明『七人の侍』(1954)

(206分・35mm・白黒)農民に雇われた7人の浪人と野武士たちの壮絶な闘いを空前のスケールで描き、その後も様々なリメイク作品を生んだ大活劇。「黒澤のジョン・フォードに対する尊敬を証す傑作」(ロッド・マクシェーンの評)。溝口健二の『山椒大夫』とともにヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞。1982年「サイト&サウンド」誌映画史上トップテンでは第3位に選ばれた。
'54(東宝)(監)(脚)黒澤明(脚)橋本忍、小國英雄(撮)中井朝一(美)松山崇(音)早坂文雄(出)三船敏郎志村喬、津島惠子、島崎雪子藤原釜足加東大介木村功、千秋實、宮口精二、小杉義男、左卜全、稲葉義男、土屋嘉男、高堂國典 (FC)

スクリーンで観るのは3回目だが、助っ人探しを始めるまでの百姓たちの描写が完全に極左映画のテイストなので驚いた。戦争体験の反映(菊千代は13歳、日本の精神年齢は12歳、戦災孤児としての菊千代、戦争に生き残った復員兵・加東大介、村の満州国的設定)、農村啓蒙運動とその挫折(志村喬の「また負け戦だったな」「勝ったのは儂らではない、百姓だ」、東宝争議、共産党武装闘争路線(山村工作隊)からの転換)、国民主義の思想とその抑圧性など、時代性との関連で感じとるべきことは多い(四方田犬彦『『七人の侍』と現代』(岩波新書)にいろいろ書いている)。それにしても、この映画の三船敏郎には神が降りているね。四人の侍は無惨なまでに犬死にであるが、千秋實が死ぬとき焼死を選んだ女のシーンは、忘れてたけど、すばらしかった。あとリドリー・スコットロビン・フッド』もパクっていたが、農村襲撃シーン、とくに雨の泥濘の中のすさまじい戦闘描写は何度見てもすごい。