リドリー・スコット『ロビン・フッド』(2010)

140分、キャスト: ラッセル・クロウケイト・ブランシェットウィリアム・ハートマーク・ストロングマーク・アディダニー・ヒューストン、アイリーン・アトキンス、マックス・フォン・シドー
グラディエーター」のリドリー・スコット監督&ラッセル・クロウが、中世英国の伝説上の義賊ロビン・フッドの闘いを描いた歴史活劇。12世紀末、十字軍の兵士としてフランスで戦っていたロビンは、帰国途上で英国の騎士ロクスリーの暗殺に遭遇する。「家宝の剣を故郷に持ち帰って欲しい」というロクスリーの遺言を受け、彼の父親が領主を務めるノッティンガムを訪れたロビンだったが、やがて英国侵略を目論むフランスの陰謀に巻き込まれていく。(映画.com)

リチャード獅子心王とその弟ジョン王が出てきて、マグナ・カルタの場面なんかもあって、おもしろかった。プランタジネット朝は、フランスのアンジュー伯で、カペー朝の家臣だから、ヘンリ2世はノルマン朝の血脈も引き継いでいるとはいっても、フランスとの結びつきは強いわけで(南仏との縁戚関係も強固)、ちょっとこの映画では、イングランドナショナリズムを前提にしすぎている印象が濃い。まあ、実質的なイングランド建国神話を求めるとしたら、たぶんこの時期になるとは思うので、別にいいんだけど。ノルマン朝以来のヨーロッパ随一の行政組織を引き継いで、プランタジネット朝とその封建諸侯たちが、イングランドを単位とする協働関係を築いていくのがこの時期。ちなみにマグナ・カルタについては、「昔は議会主義の起源みたいな進歩史観史記述が多かったが、むしろこれは封建反動であったという考え」がむしろ古いとされていて、見ようによってはローマ法の継受のなかで「法にもとづく統治」という観念が根付いてきたことの反映であると理解してまちがいない、ということらしい。だから、ここでのロビンフッドの描かれ方は、その意味でも、それなりに納得できる建国神話であるといえる。
カペー朝のフィリップ2世がまるで、アルマダの海戦のときのフェリペ2世みたいになってたんだけど(あるいは『プライベート・ライアン』のノルマンディー上陸作戦、ちなみに村の襲撃シーンはそのまんま『七人の侍』風)、こんだけイギリス万歳映画だと、フランス人は見られないよな、と思った。