ワン・シャオシュアイ『北京の自転車』(2000)

十七歳的単車 中国・台湾映画 北京語 113分 出演: ツイ・リン、リー・ピン
農村から出稼ぎに来た17歳のグイは、自転車配達人として働き成績を上げたが、自分の物になるはずの自転車を盗まれてしまい…17歳の高校生ジェンは中古自転車を買ったが、その自転車はグイが盗まれた自転車だった。経済発展にともなう矛盾の中の青春像!!(GH)

素晴らしすぎる作品。農民工として都会に出てきたグイと、有名高校に通うが裕福とはいえないジェン。盗まれた自転車を介して、二人は出会う。ジェンには恋人らしき同級生の女の子がいて、グイにも憧れて眺めるだけの“裕福な都会の女性”がいる。希望は叶えられないわけではないし、手に入れられないものではない。しかし、それはいつ、指の間をすり抜けて消え去ってしまうかわからない。だから、この瞬間だけが、誰が何と言おうとも、比類なく大切なのだ。それが失われることはたとえようもない痛みなのだ。――などという感受性は、青春時代に特有のものであるには違いないが、しかし現代の北京においては、このような感受性こそが、人びとの人生をまるごと映し出すようなリアルな痛みとして存在しているのだろうと思われた。これは階級の問題(!!)(都市/農村戸籍も含めて)であるが、究極的には人生一般の問題でもある。気づけば、想像もしないかたちで、誰かにとっての痛みが転がっているわけだし、自分にとっての痛みが誰かに想像可能なものであるとは限らない。(そして登場人物=中国人の誰もが、他人の想像など当てにしていないのが素晴らしい。)
中下層民向けの高層アパート、高級ホテルが林立するなかで、胡同(フートン)の入り組んだ街路、生活感の濃い四合院(スーホーユアン)の佇まいがすばらしい。とにかく北京の街並みが美しい。