ステラン・リュエ『プラーグの大学生』(1913)

DER STUDENT VON PRAG (56分・18fps・35mm・無声・染調色)『カリガリ博士』(1920年)以前の最も有名なドイツ映画で、ドッペルゲンガーを主題とする本作は、当時の心理学者からも強い関心を集めた。自らの鏡像につきまとわれるプラハの学生バルドゥインを主人公に展開される幻想的な物語。1926年にも怪奇映画を得意としたヘンリク・ガレーンによってリメイクされている。小宮登美次郎コレクション。
'13(ドイツ/ドイッチェ・ビオスコープ)(監)ステラン・リュエ(脚)ハンス・ハインツ・エーヴェルス(撮)グイド・ゼーバー(美)ローベルト・A・ディートリヒ(出)パウル・ヴェゲナー、グレーテ・ベルガー、ロター・ケルナー、フリッツ・ヴァイデマン、ヨーン・ゴットウト

剣の名手で学生のバルドゥイン(パウル・ヴェゲナー)が、魔術師のスカピネリと悪魔の契約を交わす。バルドゥインは、シュヴァルツェンベルグ伯爵の娘マルギットに一目惚れをするが、彼女にはいとこの許嫁ヴァルディス=シュヴァルツェンベルグ男爵がおり、またバルドゥインとは身分も経済力も違いがありすぎた。スカピネリは、無尽蔵の金貨(10万グルデン金貨)をバルドゥインに与え、その代わりに彼の分身(鏡に映ったバルドゥイン)をもらいうけたのである。
金持ちになったバルドゥインは、マルギットとデートを果たす。しかし鏡像の分身があらわれて、二人の邪魔をする。またジプシー娘リュドゥシカが間に入って、男爵とバルドゥインは決闘をすることになるが、男爵を殺したのはバルドゥインの鏡像であった。そしてついにマルギットが、バルドゥインの姿が鏡に映らない秘密を知ってしまう。苦悩するバルドゥインは分身に向かって銃を放つのだが、その結果は…。
クラカウアー『カリガリからヒトラー』でも言及される有名作品だが、予想以上の傑作だった。なんと言っても、スカピネリがいい。まったく異様な存在感で、まさにドイツ表現主義って感じだった。