アンダース・オステルガルド『ビルマVJ 消された革命』(2008)

デンマーク、原題 BURMA VJ、85分
作品紹介ベルリン映画祭国際人権映画賞をはじめ、40を超す国際映画賞を受賞している社会派ドキュメンタリー。厳しい報道規制をかいくぐり活動を展開するビルマミャンマー)のビデオ・ジャーナリストたちが捉えた映像を通し、今も軍事独裁国家体制が続く同国の現実を見つめる。今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にもノミネートされた快作だ

軍事政権による燃料費値上げに端を発した2007年のビルマ反政府デモは、日本人ジャーナリスト長井健司氏の射殺によっても記憶に新しいが、軍事政権に対する19年ぶりの人民蜂起の模様は「民主ビルマの声」というビデオ・ジャーナリスト集団によって各国に配信され、革命運動の盛り上がりを助けた。銃を向ける兵士たちに対し、丸腰で臨む僧侶、市民、ジャーナリストらの姿は、異様な緊迫感に満ちている(15%ぐらいは再現VTR)。国家の本質的な暴力性がまざまざと迫って、命に代えても守らなければならないものが存在すること、国家に対する自然権という、社会契約のフィクション性が要請される剥きだしの現実がありうることなど、いろいろと考えさせられる。デモという行動が、これほど緊張を強いるものであるというリアリティは、普通に生きていたら想像力の外部に置かれているわけだけれど。