北野武『アウトレイジ』(2010)

プロデューサー: 森昌行、吉田喜多男、撮影: 柳島克己、美術: 磯田典宏、衣装: 黒澤和子 109分、たけし、椎名桔平加瀬亮三浦友和國村隼杉本哲太塚本高史中野英雄石橋蓮司小日向文世北村総一朗
その男、凶暴につき」「ソナチネ」「HANA-BI」といった暴力映画で知られる北野武監督が原点回帰し、ヤクザ同士の熾烈な権力闘争を描いた第15作。関東最大の暴力団山王会の若頭・加藤は直参の池元組組長・池元に、池元と付き合いのある村瀬組を締めるよう苦言を呈する。そこで池元は配下の大友組組長・大友に、その役目を任せるが……。大友にビートたけし、加藤に三浦友和のほか、椎名桔平加瀬亮國村隼石橋蓮司小日向文世北村総一朗ら豪華キャストが集結。(映画ドットコム)

バタバタと人が死んでいくヤクザの抗争の渦中で、日常が非日常(死)を取り込み、非日常(死)が日常へと連続していく、そのさまが味わい深い。残虐な死は、同時にギャグのようでもある(殺しのバリエーションにいちいち工夫がある)。鉄の規律が貫く「組織」の論理も、非常事態のもたらす真空状態にあっては、「運命」が導く裏切りに対処することはできないし、非常事態を回復する君主は、そのことによって非常事態を内部に抱え込み、専制君主に仕える廷臣は不吉な秩序の只中で、被造物(王)に対してもっとも不忠な陰謀を計る。
やくざってバカだなっていう見方もあるかもしれないが、結局のところ、人間の所業なんてこんなもんだよなとしみじみ思わされる。ひょっとすると、こういうがらくたみたいなことの積み重ねのなかに、何か意味あることの痕跡のようなものがあるのかもしれない。人間って結局死ぬわけだけど、無ではないかもしれない、みたいな。俳優陣がすばらしいね。國村隼なんかだと、ヤクザをやってるのが一番いい。椎名桔平のナオン役が美人。