マイケル・ムーア『キャピタリズム』(2009)

マイケル・ムーアはやっぱり天才的な映画作家だね。単純にドキュメンタリーとして面白いし、魂のこもった取材にも惹きつけられるが、映像と音楽の使い方がやはり傑出している。さすがの作品解説は、以下を参照。
http://newsweekjapan.jp/column/machiyama/2009/09/post-60.php
「資本主義」に対して「社会主義あるいは民主主義」が対抗軸に据えられるのだが、おそらく資本主義がだめなのではなくて「行き過ぎた資本主義」「拝金主義」がダメだと考えるべきだろう。合衆国憲法、ローズベルトのテレビ演説などに立ち戻りつつ、アメリカの宗教的伝統にも内省がめぐらされている点が興味深い。新保守主義政策のレーガン政権にメリルリンチの財務長官が就任したこと、サブプラームローン問題後の公的資金注入はゴールドマンサックス出身で固められた経済閣僚の謀略だったこと、等の(半ば公然の?)スキャンダルを暴きつつ、金持ちの強欲を押しとどめる民主主義の復権、資本主義の是正が情熱的にアジられる。逆プロパガンダの雄弁ぶりが素朴にすばらしい。マイケル・ムーアは声もとても良い。