ポン・ジュノ『母なる証明』(2009)

MOTHER 韓国映画 韓国語 129分 出演: キム・ヘジャ、ウォンビン、チン・グ http://www.hahanaru.jp
漢方薬店で働きながら育てた一人息子のトジュンが、女子高生殺人事件の第一容疑者として身柄を拘束されてしまい、母は自身で真犯人を追って走りだすが……ポン・ジュノ監督が「母とは……」と永遠のテーマを提示した衝撃の話題作!! (GH)

シークレット・サンシャイン』同様、韓国警察の捜査の杜撰さは、やはりすさまじい。人権観念なんて、踏みにじられるために存在しているみたいだ。現実がどうであるかは別として、このことは韓国社会における「法」の位置を示唆するものだと考えられる。法はタテマエの世界であり、ホンネの世界を支配するのは、カネと人間関係。法治国家の美名は飾りにすぎず、ズブズブの人間関係こそが物事を動かしているように見える。
警察が手抜き捜査をし、精神障害者を逮捕する一方、弁護士は裁判所と精神病院とつるんでいる。「法」は裏切られ、「道徳」をまっとうするにもカネが不可欠である。しかしこの映画がすごいのは、「道徳」すらも裏切られて、反道徳を肯定するギリギリの「倫理」が浮かび上がってくるところだ。生きていくことは手が血で汚れていくようなものであるし、手がいくら血で汚されようとも、生きることをやめるわけにはいかない。ケガレと痛み。
こういう感覚が生まれるのって、韓国社会の何に起因しているのか、ほんとに不思議。ともあれ、韓国映画はやっぱり最高だと思うね。