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脳味噌に重たい疲労を感じ、これって、五月病だよなって思う。ここんとこしばらく、自分はなんて賢いんだろうとか、なんて人気者なんだろうかとか、過剰な自己肯定感があって、まあ別にそれはそれで悪くはないよねって開き直っていたんだけど、しかし一人だけすでに五月ってのは、ちょっとマヌケな気がしないでもない。
結果的に、村上春樹『1Q84』(book3)は、やはりなかなか素晴らしかった。青豆には完全に惚れちゃったね。book3ではあまり新しい事件は起きず、book1とbook2での出来事が、それぞれの登場人物によって反芻されるのだが、「著者自身による作品解題」という趣きの一方で(あらずもがなの謎解き?)、「事実が語り直され、物語られることが持つ力」という作品のテーマと合っているので、これはこれでなるほどね、という気もする。
book1・book2の謎解き、という部分では、自分の読み解きが恐ろしいほど的確であったことが、ほとんど証明されちゃった感じである(って、読者はみんな思うんだろうけどね)。自分はなんて賢いんだろう。良かったら読んでみてくれたまえ。
http://d.hatena.ne.jp/kktsc/20090728
やや抽象的なネタバレになっちゃうかもしれないが、たぶん大丈夫だと思うので付言すると、超越的な力の衰退(父の不在)によって、世界を賦活するための物語が必要となり、しかしその物語が同時に邪悪なものを呼び寄せる(リトルピープル、二つの月)、そのリスクを愛によって乗り越える、という基本構造において、では実現された愛と超越的なものの関係をどう考えればよいのか、というポイントが新たに気になった。book3ではそれくらい、邪悪なものがいったん綺麗にリセットされることになる。
要するに、個と個の間に成り立つのが愛であり、個人の個とはindividualであって、分割できないものって結局神なのだから、愛において人は超越的な神を呼び寄せることになる。book1とbook2までのある種の時代診断と合わせて(連合赤軍的なるものやオウム的なるものの導入)、この落とし所については、さらに考え続ける余地があるだろう。邪悪なものの位置づけをめぐって、これをどうするのかっていう問題。まあ、こういう問題を考え続けているから、小説を書いてるんだろうけど。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
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