エーリッヒ・フォン・シュトロハイム『グリード(Greed)』(1924)

主演:ギブソン・ゴーランド、ザス・ピッツ、チェスター・コンクリン、デイル・フラー
無許可で歯科診療をするマクティーグの妻・トリーナが宝くじを当て大金が舞い込んだ。それを妬んだ夫婦の友人のマーカスは、マクティーグがもぐりの医者であることを警察に密告。一方マクティーグは、金の亡者と化したトリーナに耐えられず彼女を殺してしまい…。撮影や編集の過程で多くのトラブルが生じたことで名高い、完全主義者シュトロハイムの呪われた最高傑作。ラストのデスバレーでの撮影では、スタッフが酷暑のため死ぬという事故も。<サイレント、日本語字幕> (CV)

「ハリウッドのハッピーエンド主義映画に反逆しつづけたシュトロハイム監督の、露悪的リアリズムが頂点に達した作品。金のかけ方も長さ(四十巻、四時間半!)も異様な大作。ぼくたちが見たのは編集し直されたもの(十巻)だが、それでも陰惨さに気分が悪くなるほどだった。歯科医が女性患者の歯茎からの出血や唾液を見て欲情し一緒になるが、彼女が狂的拝金主義者と化すや、たまらずこれを殺害、砂漠へ逃げるが、自身も殺される――。フィルムの失われた部分を見てみたいと思ったのは、ぼくだけではないようだ。」(双葉十三郎『外国映画ぼくの500本』文春新書、89ー90)
ニセ歯科医はおそらく白痴に近い男で、貨幣に魅せられた妻は精神病を患っている。獣のような野蛮さと醜悪さが重苦しい、凄惨そのものの映画。夫の金を少しでも掠め取るため、妻が腐った肉を買ってくるシーンがチョー怖い。家出した夫が帰ってきた晩、「お腹が減っているなら、そこの犬の肉を食べればいい」と狂った妻は吐き捨てるように言い、とうとう殺されてしまう。この監督はどうしてこんな映画を撮ろうと思ったのだろうか。双葉十三郎さんも亡くなってしまいましたね。