中平康『光る海』(1963)

(125分・35mm・カラー)作家志望の少女・美枝子(吉永)が、友人の出産や母の再婚、失恋を経験し大人へと成長してゆく。石坂洋次郎の原作を基にした、中平康の青春ドラマ。絹代は、和子(十朱)の叔母役として叔父役の森雅之と絶妙のコンビを組み、作品に趣を添えている。
’63(日活)矢崎信子(監)中平康(原)石坂洋次郎(脚)池田一朗(撮)山崎善弘(美)松山崇(音)黛敏郎(出)吉永小百合浜田光夫森雅之、障泄??O枝子、和泉雅子山内賢、十朱幸代、杉山俊夫、和田浩治宮口精二ミヤコ蝶々飯田蝶子、障泱・R美、小夜福子、清水將夫、佐野浅夫

非常に満足。昭和38年の設定で、吉展ちゃん事件のニュースがラジオから流れたり、高層ビルの窓には東京タワーが見えたりする。現在よりも精神的には随分大人な大卒新社会人の若者達が、しかし性的にはきわめてオクテであって、たいへん奇妙で興味深かった。友人達のあいだで繰り広げられる会話のテンポの良さがすばらしく、性的に軽薄な冗談も言い合ったりするのだが、いちいち理屈っぽいのがおもしろい。吉永小百合北川景子に似ていると思ったが、複雑な人格のはずなのに、最終的に処女のヒステリーを全開させてしまっていて、やっぱり処女にしろ童貞にしろ、こじらせるのはよくないんだな。新進女流作家になった吉永小百合が演説するラストで、なぜかU先生の姿が思い浮かんだことは秘密。田中絹代のお化けみたいなしゃべり方、十朱幸代のブリッ子ぶりがそれぞれすばらしかった。