細田守『サマーウォーズ』(2009)

神木隆之介 桜庭ななみ 谷村美月 斎藤歩 横川貴大 桐本琢也 佐々木睦
小磯健二は少し内気で人付き合いが苦手な17歳。数学オリンピック日本代表の座をあと一歩で逃したことをいつまでも悔やんでいる理系オタクだ。健二はある日、憧れの夏希先輩からバイトを持ちかけられ、一緒に彼女の故郷まで旅行することになる。バイト内容は、「ご親戚」の前で彼女のフィアンセのフリをすること。しかし、仮想空間“OZ”のパスワードを解いてしまったことから、世界を揺るがすトラブルに巻き込まれてしまい…。(映画生活サイト)

仮想空間(OZのアバター達)と生活世界(長野の大家族)の思いがけないリンク。着想、シナリオ、アニメ表現は出色の出来映えで、「夏希先輩と健二の夏休み」という切り取り方も素敵だった。入道雲朝顔のショットも心に残る。
楽しい傑作だが、大傑作と言うには足りない。システムの暴走に対して、生活世界が歯止めをかけるというのはいいが、いまや生活世界すらもシステムの一部として編成されている。家族、人間同士の信頼、これらを素朴に当てにすることはできない。「仮想敵に対して人々が団結する」という処方箋はどうも20世紀的な発想だし、文系オタクに女の子が惚れるという設定も、オタク的妄想で自己愛温存的。
というわけで、世界観の設定が若干ゆるいのだけど、でもやっぱり泣けるのは確か。青春映画なのだから、ゆるくたってかまわないのかもしれない。桜庭ななみちゃんの声がちょっとしっくりこない気がしたなぁ。夏希先輩はめちゃんこ萌えなのだが。