蔵原惟繕『執炎』(1964)

(121分・35mm・白黒)蔵原惟繕山田信夫のコンビによる代表作の一つ。蔵原のもとで演技派への転身を遂げつつあった浅丘ルリ子は、自らの「100本記念映画」にこの作品を希望。網元の息子と結ばれる貧しい旧家の娘に扮し、戦争で引き裂かれるひたむきな愛の情念を表現している。
'64(日活)(監)蔵原惟繕(原)加茂菖子(脚)山田信夫(撮)間宮義雄(美)松山崇(音)黛敏郎(出)浅丘ルリ子芦川いづみ伊丹一三、平田大三郎、山田禪二、松尾嘉代、河上信夫、入江杏子、細川ちか子、信欽三、宇野重吉

ひさびさのフィルムセンター。
昨年、12月8日に『赤ちょうちん』を見て以来。

赤ちょうちん
(93分・35mm・カラー) 70年代、ロマンポルノと青春映画の佳作を多数生みだした藤田敏八の代表作のひとつ。主題歌は「かぐや姫」の同名フォーク・ソング。この年、本作と『妹』『バージンブルース』の3本で藤田と組んだ秋吉久美子は、当時のシラケ世代を代表する人気スターとなり、数々の映画新人賞を受賞した。
'74(日活)(監)藤田敏八(脚)中島丈博桃井章(撮)萩原憲治(美)山本陽一(音)石川鷹彦(出)高岡健二、秋吉久美子長門裕之河原崎長一郎石橋正次、横山リエ、山科ゆり、中原早苗、悠木千帆、三戸部スエ

これは秋吉を見に行ったんだけど、『執炎』の方は浅丘ルリ子である。
平家の落武者の集落という設定で、最初の登場からして神秘的な雰囲気。
海の男、伊丹十三と出会い、恋に落ちるが、二度の赤紙召集で夫を失い、ついには気が狂う。
浅丘ルリ子はもちろん、超絶的にかわいいが、気が狂ってからは俄然ホラー映画になって、これが断然怖いのである。
左翼的な、きわめて観念的図式性を感じたが、助監督が神代辰巳と知って「そうか」と思った。
「日本」というナショナルな想像力の境界に位置し、概念としての「日本」を揺さぶる、山、海、女といったところ。ここらへんをどう評価するか。
1964年の映画なので、難解左翼映画のハシリだろうか?
ともあれ、全体的には素晴らしい出来。堪能した。