窪岡俊之『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』(2012)

戦乱の世界。長大な剣を自在に操る屈強な剣士ガッツは、傭兵(ようへい)集団「鷹の団」を率いるグリフィスと出会う。数々の激戦をくぐり抜けたガッツとグ リフィス、そして「鷹の団」の兵士たちは、固いきずなで結ばれていく。しかし、グリフィスの夢のために戦い続けることに疑問を抱き始めたガッツは、グリフィスのもとを去る決断を下し……。声の出演:岩永洋昭櫻井孝宏行成とあ ほか vald9

これは『北斗の拳』だよな。ガッツはケンシロウ。グリフィスは、オネエっぽくなったトキ。BLっぽいノリが濃厚で、グリフィスに好意を寄せていると思われる女戦士キャスカが「鷹の団」に加わったガッツに嫉妬するとか、どうやら権力欲を持っているらしいグリフィスが、チューダーのお姫様に取り入っている場面に二人で出くわし呆然とするとか、「三角関係のもつれ」的な不思議な展開も。
北斗の拳』に似通っているのはビルディングス・ロマンという面でもそうで、ガッツがグリフィスに出会った時点では荒削りでそんなに強くない(3年後には成長した姿を見せる)とか、政敵を暗殺したところが罪のない子供まで殺してしまいアイデンティティの混乱に悩むとか(これは「一乗寺下り松の決闘」で吉岡一門の跡取りの子供に斬りつけ、比叡山の僧に詰られる宮本武蔵そのものだ)、まさに少年マンガだよなという感じ。
ケンシロウは、ラオウが愛ゆえに悪を体現していたのだというアンビバレントな深みに気づく。ガッツはどうやら、貴公子のようなグリフィスのなかに、邪悪なものを嗅ぎつけるかたちで、善悪二元論を越えていきそうである。続作にも期待。英仏百年戦争ぐらいの時代設定かなと思ったが、バロック音楽が流れてきたり、たぶんこれは未來のSF設定なんだと思う。主題歌は『パプリカ』の平沢進