ジェラール・ロジエ『最高のお仕事!』(1996)

LE PLUS BEAU MÉTIER DU MONDE(105分・35mm・カラー)ジェラール・ドパルデュー主演の学園コメディ。片田舎の高校で平穏な教師生活を送っていたローランは離婚により、治安の悪いパリ郊外の中学校に移ることとなる。フランスの若者たちをめぐる問題を真っ向から取り上げた作品。
’96(監)(脚)ジェラール・ロジエ(撮)ジャン=イヴ・ル・ムネ(美)クリスチャン・マルティ(音)ウラディミル・コスマ(出)ジェラール・ドパルデュー、ミシェル・ラロック、スアド・アミドゥ、ティッキー・オルガド、ギィ・マルシャン、フィリップ・コルサン、ダニエル・プレヴォスト(FC)

アラブ系・ユダヤ系、アルジェリア系・黒人系など、他宗教&多民族&貧困層が入り乱れるパリ郊外の中学校に、不倫がバレて離婚の憂き目にあった歴史教師ジェラール・ドバルデューが赴任。受け持った通称「特殊クラス」は、三分の一くらいが札付きのワル。学級崩壊スレスレの日々が続くなか、ドパルデュー先生も、子供たちと同じくらい大人げがない。良く言うと、不良たちに媚びない。悪く言うと、子供じみているほどキレまくる。そんなドタバタ・コメディ。
窃盗、器物破損、学級崩壊など、校長や教頭、教員たちがアタマを悩ませるなかで、フランスのいわゆる「スカーフ事件」も描かれている。これは1989年10月、公立学校の三人の女子生徒がスカーフを巻いて登校し、宗教の自由と、政教分離(=フランス共和主義)とが争われたもの。このシーンを見て、もしかして「スカーフ事件」って、純然たる宗教的信条の主張という以外に、学校のルールを逸脱する「不良たちのゲーム」の側面もあったのではないかと、ふと思った。これはあくまでも推測だが(そして、あまり推測でモノを言ってはいけないが)。
面白く作ってあるが、学校と生徒の間の独特の力学を分析的に描いており、その点で秀逸。