クリント・イーストウッド『ヒア アフター』(2011)

129分 製作総指揮:スティーブン・スピルバーグフランク・マーシャルピーター・モーガン、ティム・ムーア 製作:キャスリーン・ケネディロバート・ロレンツ 脚本:ピーター・モーガン 撮影:トム・スターン 美術:ジェームズ・J・ムラカミ キャスト: マット・デイモンブライス・ダラス・ハワードジェイ・モーアセシル・ドゥ・フランス
ジャーナリストのマリーは、東南アジアで津波に飲み込まれ、呼吸が停止した時に不思議な光景を見る。サンフランシスコ―かつて霊能力者として働いていたジョージ、今では工場に勤めている。ロンドンで暮らす少年マーカスは、突然の交通事故で双児の兄を失う。兄を思うマーカスは、霊能力者を捜すうち、ジョージのWebサイトに行き着く。一方、マリーは臨死体験を扱った本を書き上げた。やがて異なる3人の人生が交錯する日が来る…。(goo)

マット・デイモンは超能力者、セシル・ドゥ・フランス臨死体験と、完全にオカルト映画なのだが、オカルトだからどうということはない。死は誰にとっても未体験なのだから、死の表象が荒唐無稽だとか言ってみたところで、そもそも無意味だ。
死は生にとっての超越的条件であり、そこには超越的なものに対する個人の向き合い方が様々な形で現れる。超越性に向き合う強さに欠ける人(料理教室で婚活している女性)、超越的なものに混乱させられて付き合い方が分からなくなった人(マット・デイモン)、世俗的現実があきたらなくなった人(臨死体験)、痛苦に満ちた現実のなかで救済を求める人びと(マーカス)、など。ともあれ、個人が自己の内部に深く沈潜し、そこから現実へと回帰しそれを受け止めようとする、というのは、アメリカ的プロテスタンティズムの一つの形なのかなぁと思いながら観た。
登場人物たちがすーっと涙を流す場面があって、とても美しく、胸にせまる。時間の長さをまったく感じさせない。文句なしに傑作。