黒澤明『隠し砦の三悪人』(1958)

(138分・35mm・白黒)お家再興を願う家臣が姫を連れ、軍用金とともに隣国へ脱出する道程を描いたアクション映画。黒澤作品では初のワイドスクリーンの効果も存分に発揮されている。強欲で喜劇的な2人の農夫や男勝りの姫のキャラクターなど、『スター・ウォーズ』に多くの影響を与えたことでも知られる。ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。
'58(東宝)(監)(脚)黒澤明(脚)菊島隆三、小國英雄、橋本忍(撮)山崎市雄(美)村木與四郎(音)佐藤勝(出)三船敏郎千秋実藤原釜足、藤田進、志村喬上原美佐、三好榮子、樋口年子、藤木悠、土屋嘉男、障沒ー國典、加藤武 (FC)

ま、誰が見たって、何回見たって、名作は名作だ。それにしても、二人の農夫(千秋実藤原釜足)の描かれ方はどうだろうか? 金の延べ棒を見つけてはエゴをぶつけて争い合う農民と、高貴な精神性を保つためには(お家のため、友情のため…)犠牲も厭わないサムライたち(三船敏郎の妹は姫の犠牲となる)。「仲良く!」と諭されて農民はついにはエゴを自制し、姫は「火祭り」で生活に密着した活力に触れて感激してみせるが、ともあれ人生において、高次の問いと低次の問いが存在していることはみじんも疑われておらず、その問いが展開されていく物語の力はあくまで啓蒙主義的なものである。この作品が設定する問いの次元も、いつか歴史化されるときはくるのだろうか?