ダニー・ボイル『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)

SLUMDOG MILLIONAIRE イギリス 2時間00分 出演: デーヴ・パテル/フリーダ・ピント/マドゥル・ミッタル/アニル・カプール http://slumdog.gyao.jp/
人気クイズ番組で最終問題にまで進んだ18歳のジャマール。だが、スラム街育ちゆえに不審を抱かれ警察で尋問をうける……ジャマールの過酷な人生と運命が答えにつながり、彼がクイズに参加した本当の目的が明かされるパワフルなエンタテインメント感動作!!(GH)

某友人がインドで会った物乞いの子どもの話だが、その子どもはケガで片腕を失っており、金を渡さないでいると、腕の先の化膿した部分をクルマに擦りつけ、体液を付着させてきたという。「偏見かもしれないけど、インドの貧困層は普通じゃない、精神が歪んでいる」と喋っていたが、たしかにそうかもな、とこの映画を見て思ったよ。スラム出身の子どもは悪い大人に捕まって、美声の子どもは哀れみを乞うためにメクラにされる。女の子は売春婦。物乞いのタネに赤ん坊を拉致してくるぐらいは当たり前だし、人を信じていては生きていけない。
主人公の母親はムスリムヒンドゥーナショナリズムを信奉する集団に襲撃され、殺される。スラムの貧困状況もたいがいショッキングだが、ヒンドゥー教の社会的抑圧の側面も仄見えてくる(クリシュナ信仰のクイズとか)。80年代中盤、社会主義的路線からの転向以来、急速な都市化を背景とするヒンドゥーナショナリズムが浸透した(中島岳志『インドの時代』)。ビルの林立するムンバイの景観の変化は衝撃的だ。この辺もうまくストーリーに取り込まれている(近代的オフィスでお茶くみをするジャマール、建設中ビルでの兄との再会)。
タージマハルの映像も素晴らしい。ラストは泣ける恋愛ストーリー。女の子も美人だし、切ないし、これは傑作。