田中徳三『眠狂四郎殺法帖』(1963)

(84分・35mm・カラー)市川雷蔵主演の「眠狂四郎」シリーズ第1作。加賀藩の密貿易に狂四郎が巻き込まれ、冷めた憤りとともに剣を握る。すでに鶴田浩二などによる狂四郎作品はあったが、田中監督はどうしても雷蔵で撮りたいと切望し、脚本家・星川清司がそれに応えて、雷蔵に合った無頼の徒のイメージを見事に創り出した。
’63(大映京都)(監)田中徳三(脚)星川清司(美)内藤昭(原)柴田錬三郎(撮)牧浦地志(音)小杉太一郎(出)市川雷藏、中村玉緒、城健三朗、小林勝彦、障沍ゥ国一、扇町景子、真城千都世、沢村宗之助、荒木忍、南部彰三(FC)

転びキリシタンと武士の娘の子、というのが狂四郎の生い立ちらしいが、理想家であるからこそ、この無明の世界においてニヒリストでしかありえない、というキャラ設定は面白い。雷蔵もなかなかよい。お家取りつぶしを怖れる加賀藩主をはじめ、人間の強欲は果てしがない。ただし、音楽や映像がいまいちなのと、青い石でできた仏像に秘密の文書が画されている、という脚本のバカバカしさが残念だった。可能性は感じ取れたのだが、いま一歩という感じ。