篠田正浩『獣の戯れ』(1964)

原作:三島由紀夫 主演:若尾文子河津清三郎、伊藤孝雄、 三島雅夫加藤嘉星ひかる、紺野ユカ、十和田翠、工藤堅太郎
不倫を繰り返す夫の逸平に文句も言わず仕える貞淑な妻・優子。逸平の店のアルバイト学生・幸二は、そんな優子に同情にも似た思慕を抱いていた。そんなある日、優子をかばった幸二が逸平を殴って傷害を負わせ、逮捕される。優子は出所した幸二を迎え入れ、廃人同様の逸平との三人の奇妙な同棲生活が始まるのだが・・・。放心の微笑で、妻と青年の情事を見つめる夫!人間を獣にかえる異常な愛情心理を追求した異色文芸大作。(CV)

よだれを垂らす河津清三郎の痴呆ぶり。夫が元気なうちは塞ぎ込んでいた若尾文子が夫が弱った途端、急に生き生きとしはじめるのも怖い。あら、三人でお風呂に入りたいの?だって今入ったばかりでしょ。
川津と若尾と若い男の三角関係が焦点だが、話の筋自体はもはや古くさい。若い男の直情ぶりがあまりにもアナクロ若尾文子の生き物としてのなまめかしさは、食虫植物のような不気味な魅力があって、やはりすばらしい。